30by30とは?企業のメリットやOECM認定の仕組みを解説
2026-02-04
企業のCSR担当者や経営企画の方で、「カーボンニュートラルの次は生物多様性だと言われるが、具体的に何をすればいいのかわからない」と悩んでいる方はいらっしゃいませんか。脱炭素への取り組みが進む一方で、自然資本の保全に対する国際的な要請は急速に高まっています。この記事では、現在もっとも注目されている生物多様性の国際目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」について解説します。言葉の定義だけでなく、企業が参画するメリットや、政府が推進する認定制度「OECM(自然共生サイト)」の仕組みまで、実務に役立つ情報を網羅しました。読み終わる頃には、自社の緑地や活動をどのように企業価値へつなげるべきか、明確なアクションが見えてくるようになります。
30by30とはどのような目標なのか?
30by30(サーティ・バイ・サーティ)という言葉をニュースや環境省の発表で目にする機会が増えてきました。まずは、この言葉が指す具体的な数値目標と、その背後にある国際的な合意形成の流れについて詳しく見ていきましょう。
2030年までに陸と海の30%を保全すること
30by30とは、2030年までに自国の陸域と海域の少なくとも30%を健全な生態系として保全・保護しようとする国際目標のことです。これは単に「自然をそのまま残す」ということだけではありません。国立公園のような法的に守られた保護地域を拡大することに加え、企業や自治体が所有する里山や社有林なども含めて、適切に管理されたエリアを増やしていくことを目指しています。現在の日本の保護地域は、陸域で約20%、海域で約13%にとどまっています。2030年までに残りの数%から十数%を積み上げる必要があり、国だけの力では達成が困難です。そこで、民間企業や自治体が所有する緑地の活用が不可欠とされており、ビジネスセクターへの期待が非常に高まっているのが現状です。
生物多様性の損失を食い止める世界的な約束
この目標が決まった背景には、危機的な状況にある生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」という考え方があります。2021年のG7サミットでG7各国が30by30への約束を表明し、その後、2022年に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」において、世界共通の目標として正式に位置づけられました。これは気候変動における「パリ協定」に匹敵する重要な合意です。世界中の国々が協力して自然資本を守る姿勢を示したことで、ビジネスのルールも大きく変わり始めています。企業活動においても、自然への負荷を減らすだけでなく、自然を回復させる貢献が求められるフェーズに入ったと言えるのです。
なぜ今企業が30by30に取り組むべきなのか?
「環境保護はコストがかかるだけで利益にならない」と考える時代は終わりを迎えつつあります。ここでは、企業が30by30に取り組むことが、なぜ経営戦略上重要なのか、リスク管理と機会創出の2つの側面から解説します。
生物多様性の損失が経営リスクになるため
私たちの経済活動は、水、食料、木材、気候の安定など、自然界からの恵み(生態系サービス)に大きく依存しています。世界経済フォーラムの報告によれば、世界のGDPの半分以上が自然資本に中程度または高度に依存しているとされています。もし生物多様性が失われ続ければ、原材料の調達が困難になったり、洪水や干ばつのリスクが高まったりすることで、事業継続そのものが危ぶまれる可能性があります。企業にとって自然を守ることは、自社のサプライチェーンを守ることと同義です。30by30への貢献を通じて生態系の保全に関わることは、将来発生しうる原材料価格の高騰や操業停止といった物理的リスクを回避するための、現実的な防衛策となります。
投資家や消費者からの評価に直結するため
近年、ESG投資の流れの中で、機関投資家は企業の「自然関連財務情報」を重視し始めています。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みが広がる中、企業は気候変動だけでなく、自然資本への影響と依存度を開示することが求められています。30by30への参画は、わかりやすい「生物多様性への貢献」の指標となるため、投資家への強力なアピール材料になります。また、消費者や取引先の意識も変化しています。環境に配慮した製品や企業姿勢が選好される傾向は年々強まっています。30by30に関連する認定を取得し、それを対外的に発信することで、企業のブランド価値を高め、優秀な人材の採用や新たな顧客の獲得につながるというメリットも期待できます。
具体的な手段であるOECMや自然共生サイトとは何か?
30by30を達成するための鍵となるキーワードが「OECM」です。企業の実務担当者がもっとも理解しておくべきこの仕組みと、日本独自の認定制度である「自然共生サイト」について詳しく見ていきましょう。
民間の緑地を保護地域として認定する仕組み
OECMとは「 Other Effectivearea-based Conservation Measures 」の略で、法的な保護地域以外で、生物多様性保全に資する地域を指します。具体的には、企業の敷地内にある森、里山、水源林、あるいは都市部のビオトープなどが該当します。これらは国立公園のように厳格に囲い込むのではなく、企業活動や人々の暮らしと共存しながら、結果として自然が守られている場所を国際的な保全エリアとしてカウントしようという仕組みです。これまで評価されにくかった企業の緑地管理が、OECMとして認められることで、国際目標への直接的な貢献として可視化されるようになります。これが、30by30が企業にとって大きなチャンスであると言われる最大の理由です。
自然共生サイト認定がもたらす実質的な効果
日本では、このOECM認定を推進するために環境省が「自然共生サイト」という認定制度を開始しています。企業や自治体などが所有する区域について申請を行い、審査に通れば「自然共生サイト」として認定されます。認定された区域は、国のデータベースに登録され、OECMとして国際データベースにも反映される予定です。自然共生サイトに認定されると、企業は「認定証」を受け取ることができ、ロゴマークを広報活動に使用することが可能です。これにより、CSRレポートやウェブサイトで客観的な評価に基づいた環境貢献をPRできます。また、地域のNPOや専門家との連携が生まれることも多く、本業以外でのステークホルダーとの関係強化にも役立ちます。
企業が30by30に参加するための具体的な手順はどうすれば良いか?
実際に30by30の枠組みに参加し、活動を始めるためにはどのようなステップを踏めばよいのでしょうか。ここでは、最初の一歩から認定取得までの具体的な流れを解説します。
環境省の30by30アライアンスに登録する
もっとも手軽で最初に行うべきアクションは、「30by30アライアンス」への参加です。これは環境省が主導する有志連合で、企業、自治体、NPOなどが参加しています。参加費は無料で、ウェブサイトから所定の様式(参加宣言など)を提出するだけで登録申請が可能です。アライアンスに参加すると、最新の政策情報が得られるほか、会員同士の交流会やマッチングイベントに参加できます。自社だけで生物多様性の取り組みを進めるのが難しい場合でも、ノウハウを持つ他の企業や団体とつながることで、具体的な活動のヒントを得やすくなります。また、アライアンス参加企業としてロゴを使用できるため、初期段階での対外的な意思表示としても有効です。
自社の緑地で自然共生サイトの認定を申請する
さらに踏み込んだ取り組みとして推奨されるのが、「自然共生サイト」の申請です。まず自社が保有または管理している土地の中で、生物多様性の保全に貢献しているエリアを選定します。次に、その場所の生態系調査(モニタリング)を行い、どのような生き物が生息しているか、どのような管理が行われているかを記録します。これらのデータを基に申請書を作成し、環境省の審査を受けます。審査では「境界が明確か」「ガバナンスが効いているか」「長期的な管理が見込めるか」「生物多様性の価値があるか」といった基準がチェックされます。専門的な調査が必要な場合は、アライアンスを通じてコンサルタントや専門家の紹介を受けることも検討すると良いでしょう。認定されれば、自社の土地が「世界を守る30%」の一部として公的に認められることになります。
30by30に取り組む際の注意点
30by30は企業にとってメリットが大きい一方で、進め方を誤ると逆効果になるリスクもあります。活動を形骸化させないために、担当者が特に注意すべきポイントを押さえておきましょう。
実態の伴わないグリーンウォッシュを避ける
もっとも避けるべきなのは、見せかけだけの環境配慮、いわゆる「グリーンウォッシュ」と見なされることです。たとえば、OECM認定を取りたいがために、本来の生態系を無視して見栄えの良い外来種を植えたり、認定取得後に関心を失って管理を放置したりすることは絶対にあってはなりません。外部からの評価は、一時的な認定取得ではなく、その後の継続的なプロセスに対して下されます。活動報告では、成功事例だけでなく課題や改善点も正直に開示する透明性が重要です。科学的な根拠に基づいた活動を行い、実質的な生物多様性の回復に寄与しているかどうかが常に問われています。
長期的な維持管理計画と予算を確保する
自然環境の保全は、1年や2年で結果が出るものではありません。30by30やOECMの認定要件にも、長期的な管理体制が含まれています。担当者が変わっても活動が継続されるよう、属人化を防ぐ仕組みづくりが必要です。また、維持管理には継続的なコストがかかります。経営層に対しては、単なる社会貢献費としてではなく、リスク管理やブランド価値向上への「投資」として予算を説明し、中長期的な計画の承認を得ることが重要です。地域のボランティアやNPOと連携することで、コストを抑えつつ活動の質を高める工夫も有効な手段となります。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- 30by30とは、2030年までに陸と海の30%以上を保全し、生物多様性の損失を回復させる国際目標です。
- 企業にとっては、OECM(自然共生サイト)認定を通じて自社の緑地を国際貢献に活用できる大きなチャンスです。
- アライアンスへの参加や認定取得は、ESG評価の向上や経営リスクの低減といった具体的な実利につながります。
生物多様性への取り組みは、もはや「守りの活動」ではなく、企業の持続可能性を高める「攻めの戦略」です。まずは30by30アライアンスへの登録から始め、自社の資産を再評価することから、ネイチャーポジティブへの第一歩を踏み出してみましょう。













