【2026年施行】廃棄物処理法改正のポイント!契約書とマニフェストの実務対応
2026-03-18
2026年1月を迎え、廃棄物管理の実務において重要な法改正が施行されました。日々の業務に追われる中で、「今回の改正で契約書をどう直すべきか」「電子マニフェストの運用はどう変わるのか」と不安を感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、2025年4月に公布され、順次施行が始まっている「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(廃棄物処理法)」の改正ポイントについて、排出事業者の実務担当者がやるべきことに絞って解説します。読み終わる頃には、契約書の修正箇所や今後のマニフェスト管理の変更点が明確になり、自信を持って対応を進められるようになります。
2025年公布・廃棄物処理法改正の全体像とは?
今回の法改正は、単なる規制強化ではなく、サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行を加速させるための重要なステップです。これまでは「適正に処分されたか」の確認が主眼でしたが、これからは「どのような物質が含まれ、どのように再資源化されたか」という情報の透明性が求められるようになります。
改正の目的は資源循環と適正処理の高度化
廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の施行規則改正は、大きく分けて二つの目的を持っています。一つは、廃棄物に含まれる化学物質の情報を正確に伝達し、処理段階での事故防止や環境汚染を防ぐこと。もう一つは、廃棄物が最終的にどうなったかだけでなく、どのような形で再資源化(リサイクル)されたかを見える化し、質の高いリサイクルを促進することです。これにより、排出事業者は自社が出した廃棄物のトレーサビリティ(追跡可能性)をより詳細に確保できるようになり、ESG経営や脱炭素への貢献を具体的に示しやすくなります。
担当者が押さえるべき2つの施行スケジュール
実務担当者にとって最も重要なのは「いつから対応が必要か」という点です。今回の改正は内容によって施行日が異なるため、以下のスケジュールを確実に頭に入れておく必要があります。特に、契約書に関する変更は2026年1月1日からすでに施行されているため、直ちに対応が必要です。
施行時期 | 主な改正内容 | 対象となる実務 | 緊急度 |
2026年(令和8年)1月1日 | 契約書の法定記載事項追加 | 産業廃棄物処理委託契約書(収集運搬・処分) | 高(即対応) |
2027年(令和9年)4月1日 | 電子マニフェスト報告項目追加 | 電子マニフェストの登録・確認業務 | 中(準備開始) |
【2026年1月施行】委託契約書の記載事項はどう変わる?
2026年1月1日より、産業廃棄物の処理を委託する際に交わす契約書(委託契約書)に記載しなければならない「法定記載事項」が追加されました。これは、排出事業者が処理業者に対して、廃棄物の性質に関するより詳細な情報を提供する義務を負うことを意味します。
追加必須となる第一種指定化学物質の情報
新たに追加された記載事項は、「廃棄物に含まれる第一種指定化学物質の名称及びその量(または割合)」です。これは、特定の化学物質を含む廃棄物を委託する場合、その情報を契約書に明記しなければならないというルールです。
具体的には、廃棄物処理法施行規則第8条の4の2などの規定により、委託契約書に以下の情報を記載することが義務付けられました。
- その産業廃棄物が「第一種指定化学物質」を含んでいるか、付着しているか。
- 含んでいる場合は、その物質の名称。
- その物質の量、または濃度(割合)。
これにより、処理業者は廃棄物の危険性や性状を事前に正確に把握でき、適切な処理方法を選定したり、作業員の安全を確保したりすることが可能になります。
対象となる事業者と廃棄物の具体的条件
すべての委託契約書に化学物質情報の記載が必要なわけではありません。以下の2つの条件を両方満たす場合に、記載義務が発生します。
- 条件1:排出事業者が「第一種指定化学物質等取扱事業者」であること
「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法/PRTR法)」に基づき、化学物質の排出量等の届出義務がある事業者が対象です。
- 条件2:委託する廃棄物に「第一種指定化学物質」が含まれていること
化管法で指定された第一種指定化学物質(揮発性有機化合物や重金属など)が含まれている、または付着している産業廃棄物が対象です。つまり、PRTR法の対象事業者でない場合や、対象事業者であっても該当する化学物質を含まない廃棄物(単なる紙くずや木くずなど)のみを委託する場合は、今回の契約書記載義務の対象外となります。
情報提供が必要な化学物質の確認方法
記載すべき化学物質の名称や量は、基本的にPRTR法(化管法)に基づく届出データや、製品のSDS(安全データシート)を活用して特定します。廃棄物処理法上の記載義務においては、必ずしも廃棄物そのものを毎回分析して正確な含有量を測定することまでは求められていません。PRTR制度で把握している移動量の算出根拠となるデータや、製造工程で使用した原材料の配合比率などから、合理的に算出または推定した数値を記載すれば足ります。重要なのは、「処理業者が安全かつ適正に処理するために必要な情報を提供する」という姿勢です。不明な点がある場合は、実測データがない旨を伝えた上で、想定される最大濃度を記載するなどの運用も考えられます。
既存契約書の修正や覚書の必要性
ここで気になるのが、「2025年以前に締結した既存の契約書はどうなるのか」という点です。法改正の一般的な解釈として、施行日以降に新たに締結する契約書には新ルールが適用されますが、継続中の契約についても情報の追記が求められるケースがあります。
今回の改正に関しては、既存の契約書をすべて巻き直す(作り直す)必要までは必ずしもないと解釈される場合が多いですが、以下の対応が強く推奨されます。
- 自動更新のタイミングで覚書を締結する
契約更新時に、「本契約に基づく廃棄物には〇〇という物質が〇%含まれています」という覚書を交わし、契約書の一部として扱う。
- WDS(廃棄物データシート)での通知を契約書に紐づける
契約書本体に「廃棄物の性状等の詳細は別途交付するWDSによる」といった文言がある場合、最新の化学物質情報を記載したWDSを処理業者に交付し、受領印をもらうことで実質的な契約内容の補完とする。
いずれにせよ、コンプライアンスの観点からは、対象となる廃棄物を委託している処理業者に対し、速やかに書面で情報を通知し、契約内容をアップデートしておくことがリスク管理として最適です。
【2027年4月施行】電子マニフェストの報告項目追加とは?
次に、来年(2027年4月)に施行が予定されている電子マニフェストの改正について解説します。こちらは契約書とは異なり、システム上の報告項目が増える形になります。
最終処分終了報告から再資源化情報の追跡へ
これまでの電子マニフェスト制度では、排出事業者が最終的に確認できるのは「最終処分が終了した」という事実(E票の内容)が主でした。しかし、2027年4月の改正以降は、処分業者が報告すべき項目が大幅に拡充されます。具体的には、中間処理後の廃棄物が最終処分(埋立など)されたのか、あるいは再生利用(リサイクル)されたのか、その行方をより詳細に入力することが義務付けられます。これにより、排出事業者は「自分の出したゴミが、最終的にどうなったか」をより高い解像度で把握できるようになります。
排出事業者が確認できる新たなリサイクル情報
この改正により、排出事業者の手元には以下のような情報がフィードバックされるようになります。
項目 | 従来のマニフェスト | 2027年4月改正後 |
処分の内容 | 最終処分終了の有無 | 最終処分か、再生か |
再資源化の詳細 | (把握困難な場合が多い) | 再生された物の種類・数量 |
処理の流れ | 最終処分場所の特定 | 中間処理から再生までの全工程 |
例えば、これまでは「中間処理されて最終処分終了」とだけ通知されていたものが、「中間処理を経て、路盤材として〇トン再生利用された」といった具体的な情報を画面上で確認できるようになります。これは、自社のリサイクル率向上や、環境報告書(サステナビリティレポート)への記載において非常に有益なデータとなります。
義務化までに準備しておくべき社内体制
電子マニフェストの項目追加は主に処分業者の入力負担が増えるものですが、排出事業者としても無関係ではありません。処分業者が正確なデータを入力するためには、排出段階での廃棄物の種類や数量の情報がより正確であることが前提となるからです。施行までの1年強の間に、委託先の処分業者が新システムに対応できるかを確認し、必要であればより詳細なリサイクル実績を出せる優良業者への切り替えを検討するのも一つの戦略です。
同時に押さえるべき再資源化事業等高度化法とは?
廃棄物処理法の改正とセットで理解しておきたいのが、2025年に施行された「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(再資源化事業等高度化法)」です。これは廃棄物処理法の「特別法」的な位置付けであり、高度なリサイクルを行う事業者に対して法的な優遇措置を与えるものです。
廃棄物処理法の特例措置と認定制度の概要
この法律の目玉は、国が認定した「高度な再資源化事業」について、廃棄物処理法の業許可(収集運搬業や処分業の許可)を不要とする特例措置です。通常、廃棄物処理業を行うには都道府県ごとの許可が必要ですが、大臣認定を受けることで広域的な回収やリサイクルがスムーズに行えるようになります。
分離回収や再資源化プロセスの認定メリット
排出事業者にとってのメリットは、この認定を受けた事業者(メーカーやリサイクル業者)と連携することで、より効率的でコストメリットのあるリサイクルスキームを構築できる点にあります。例えば、自社製品の廃棄物を回収して再び原料に戻すような「水平リサイクル」を行う際、この法律の認定スキームを活用すれば、自治体ごとの複雑な許可手続きをスキーム全体で省略または簡素化できる可能性があります。今後は、従来の処理業者だけでなく、こうした「高度化法認定事業者」をパートナーとして選定することが、廃棄物管理戦略の重要な選択肢となるでしょう。
担当者が確認すべき3つのアクション
最後に、これまでの解説を踏まえて、廃棄物管理担当者が着手すべき具体的なアクションを3つにまとめました。
自社の廃棄物に含まれる化学物質の棚卸し
まず行うべきは、自社が「化管法(PRTR法)の対象事業者」であるかの再確認と、排出している産業廃棄物に「第一種指定化学物質」が含まれているかのチェックです。製造部や品質管理部と連携し、使用している原材料のSDSを確認してください。「実は微量の鉛が含まれていた」「溶剤としてトルエンを使っていた」といった事実があれば、それは今回の契約書改正の対象となります。
処理委託契約書のひな形改訂と周知
次に、社内で使用している産業廃棄物処理委託契約書のひな形を見直します。「廃棄物の成分・性状」を記載する欄に、「第一種指定化学物質の名称及び量」を記入するスペースを追加しましょう。また、法務部門と連携し、今後締結する新規契約では必ずこの項目を埋めるよう、社内ルールの改訂と周知を行ってください。
委託先業者との情報連携と契約更新準備
既存の委託先業者に対し、今回の法改正に伴う情報提供を行います。対象となる廃棄物を委託している場合は、成分情報を記載した覚書案やWDSを送付し、「法改正に対応するための情報通知です」と明確に伝えて合意を取り付けましょう。処理業者側も法改正対応には敏感になっているため、排出事業者側から能動的に情報提供を行うことで、信頼関係の強化にも繋がります。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- 2026年1月から契約書ルールが変更:PRTR法対象事業者は、指定化学物質を含む廃棄物を委託する際、契約書への物質名・量の記載が必須となりました。
- 2027年4月からマニフェストが進化:電子マニフェストで「再資源化」の具体的な情報が追跡可能になり、リサイクルの透明性が向上します。
- 高度化法も活用:新法による認定制度を活用すれば、より効率的な資源循環スキームを構築できる可能性があります。
今回の法改正は、適正処理から資源循環へと廃棄物管理のステージを引き上げるものです。契約書の修正などの事務作業は確かに手間ですが、これを機に自社の廃棄物の「中身」と「行方」を再確認することで、コンプライアンス体制を盤石にし、企業の社会的価値を高めるチャンスに変えていきましょう。













