外国人技能実習制度とは?受け入れの仕組みから費用の目安、新制度への移行まで分かりやすく解説
2026-07-22
人手不足の解消に向けて外国人技能実習制度の利用を検討している企業の担当者の方へ向けて、制度の仕組みから費用の目安までを詳しく解説します。制度の廃止や新制度への移行というニュースを見て、今から準備を進めても良いのか不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、受け入れの手順から今後の新制度への対応までを分かりやすくお伝えします。最後までお読みいただくと、自社でどのように準備を進めればよいかの具体的な道筋が見えてきます。
外国人技能実習制度とは?目的と基本的な仕組み
外国人技能実習制度は、日本の企業で外国人が働きながら技術や知識を身につけるための仕組みです。この制度を利用することで、多くの企業が外国からの若い人材を職場に迎え入れています。まずは、制度の基本的なルールや概要について整理していきましょう。
項目 | 内容の概要 |
制度の主な目的 | 開発途上国への技術移転と国際貢献 |
対象となる職種 | 建設、食品製造、機械金属など90職種以上 |
在留期間 | 最長5年間(一定の試験合格が必要) |
受け入れの方式 | 団体監理型(組合経由)と企業単独型の2種類 |
制度の本来の目的と実態
外国人技能実習制度の本来の目的は、日本が培ってきた高度な技術や知識を開発途上国へ移転し、その国の経済発展を担う人材を育成するという国際貢献です。つまり、法律上の建前としては、労働力不足を補うための制度ではありません。実習生は「働きに来る」のではなく、「学びに来る」という位置づけになっています。
しかし、実際の現場では、少子高齢化による深刻な人手不足を背景に、実習生が貴重な労働力として企業の最前線で活躍しているのが実態です。この目的と実態のズレが、後ほど解説する制度見直しの大きな理由にもつながっています。企業としては、労働力として期待する一方で、彼らを育成し、技術を教えるという本来の責任も同時に求められる点を理解しておくことが大切です。
対象となる職種と作業
すべての企業が自由に技能実習生を受け入れられるわけではなく、国が定めた特定の職種や作業に該当する業務を用意できる企業だけが対象となります。2024年の段階で、建設関係や食品製造関係、機械・金属関係などを中心に、94職種171作業が対象として認められています。
特に多くの実習生が活躍しているのが、建設現場での作業や、お弁当・加工食品の製造ライン、そして金属加工などの製造業です。自社の業務が対象職種に当てはまるかどうかは、厚生労働省や出入国在留管理庁の公式資料で確認することができます。対象職種は時代に合わせて少しずつ追加されているため、以前は対象外だった業務でも、現在なら受け入れが可能になっているかもしれません。
在留資格の期間と区分
技能実習の在留資格には、期間と習熟度に応じて1号から3号までの3つの区分が設けられています。入国して最初の1年間は「技能実習1号」と呼ばれ、基礎的な技術を学ぶ期間と位置づけられています。この1年目の終わりに基礎級という試験があり、これに合格すると「技能実習2号」へ移行し、さらに2年間実習を続けることができます。
3年間の実習を無事に終え、さらに専門級の試験に合格するなど一定の条件を満たすと、「技能実習3号」として追加で2年間滞在することができます。つまり、一人の実習生は最長で5年間、日本の企業で働くことができる仕組みです。長く働いてもらうためには、企業側が試験対策のサポートを行うなど、計画的な指導体制を整えることが求められます。
技能実習生を受け入れる企業のメリットとデメリット
技能実習生の受け入れには、企業にとって大きなメリットがある一方で、当然ながら見過ごせないデメリットや注意点も存在します。良い面と悪い面の両方を正しく把握することが、受け入れを成功させるための第一歩と言えるでしょう。
比較の視点 | 具体的な内容 |
企業のメリット | 若く意欲的な人材の確保、社内の活性化、マニュアル整備の推進 |
企業のデメリット | コミュニケーションの壁、複雑な手続き、コンプライアンス管理の負担 |
費用と期間の課題 | 初期費用の負担が大きく、受け入れまでに半年以上の時間がかかる |
雇用に関する責任 | 日本人従業員と同等以上の労働基準法が適用される |
企業が得られるメリット
大きなメリットの一つは、若くて学習意欲の高い人材を安定して確保しやすい点にあります。技能実習生の多くは20代前半の若者であり、日本の技術を学んで母国の家族を支えたいという強い熱意を持っています。彼らが一生懸命に働く姿は、周囲の日本人従業員にも良い刺激を与え、職場全体の雰囲気が活気づくという効果を実感する企業もあります。
また、外国人にも伝わるように業務のやり方を見直す過程で、社内のマニュアル整備が大きく進むという副次的なメリットもあります。言葉の壁を乗り越えるために、写真や図解を用いた分かりやすい手順書を作成することで、結果的に新入社員やパート従業員への指導もスムーズになります。業務の属人化を防ぐ良いきっかけになるはずです。
受け入れ前に知っておくべきデメリットと注意点
一方で、コミュニケーションの壁は常に企業を悩ませる課題となります。実習生は入国前に日本語を勉強してきますが、現場の専門用語や早口の指示をすぐに理解できるわけではありません。意思疎通のすれ違いからミスが起きたり、安全確認が不十分になったりするリスクがあるため、根気強く教える姿勢が求められます。
さらに、手続きの煩雑さやコンプライアンス遵守のプレッシャーも覚悟しなければなりません。技能実習生には日本の労働基準法や最低賃金が完全に適用されるため、残業代の未払いや不当な扱いは法律で厳しく罰せられます。また、受け入れまでには書類作成や面接などで半年以上の期間を要するため、すぐに人材が必要という急なニーズには対応しづらい点にも注意が必要です。
外国人技能実習生の受け入れ方法と流れ
実際に技能実習生を受け入れる場合、どのようなルートで手続きを進めればよいのでしょうか。制度を利用するには大きく分けて二つの方法があり、自社に合った方式を選ぶことからスタートします。
受け入れ方式 | 仕組みの概要と特徴 |
企業単独型 | 日本の企業が海外の支店や取引先から直接職員を受け入れる方式 |
団体監理型 | 事業協同組合や商工会などの監理団体を通じて受け入れる方式 |
費用負担の違い | 企業単独型は自社手配のため費用が変動、団体監理型は組合への支払いが中心 |
利用割合の実態 | 全体の97パーセント以上の企業が「団体監理型」を利用している |
企業単独型と団体監理型の違い
企業単独型は、海外に現地法人や合弁企業を持つ大きな会社が、その現地の従業員を日本の本社に呼んで教育する方式です。自社の関連会社から直接人材を引っ張ってくるため、外部の団体を通さずに手続きを進めることができます。ただし、海外に独自のネットワークを持つ企業でなければ利用できないという高いハードルがあります。
そのため、日本の大部分の中小企業はもう一つの方法である「団体監理型」を利用しています。これは、事業協同組合や商工会といった非営利の監理団体に加入し、その団体を通じて海外の送り出し機関から実習生を紹介してもらう方式です。監理団体が煩雑な書類作成や入国手続きをサポートしてくれるため、専門的なノウハウがない企業でも安心して受け入れを始めることができます。
団体監理型での受け入れステップ
団体監理型で受け入れを進める場合、まずは信頼できる監理団体(協同組合など)を探して加入することから始まります。監理団体と契約を結んだ後は、どのような人材が何人必要なのかを伝え、現地の送り出し機関から候補者を推薦してもらいます。その後、現地の面接やオンライン面接を通じて、自社に合う実習生を採用することになります。
採用が決まっても、すぐに日本に来られるわけではありません。実習生は母国で約数ヶ月間の日本語研修やマナー講習を受け、同時に入国管理局へのビザ申請手続きが進められます。無事に入国した後は、さらに日本国内の施設で約1ヶ月間の講習を受け、日本の交通ルールや生活習慣を学びます。これらのステップをすべて終えて、初めて自社の職場に配属されるという長い道のりをたどります。
技能実習生受け入れにかかる費用の目安
技能実習制度を活用するうえで、経営者の方が最も気になるのが費用の問題ではないでしょうか。外国人を雇用するためには、日本人の採用とは異なる特有の費用が発生します。ここでは、初期費用と毎月のランニングコストに分けて、一般的な相場を解説します。
費用の種類 | 金額の目安(1人あたり) | 主な内訳 |
初期費用 | 約40万円から60万円 | 渡航費、現地の事前講習費、入国後の講習費、ビザ申請費用 |
監理団体への加入金 | 約5万円から10万円 | 組合の出資金、加入手数料(企業単位で発生) |
ランニングコスト | 月額約3万円から5万円 | 監理団体への毎月の監理費やサポート費用(給与は別途) |
実習生の給与 | 地域の最低賃金以上 | 基本給、残業代、社会保険料の会社負担分など |
初期費用の目安と内訳
実習生が自社に配属されるまでにかかる初期費用は、一人あたりおよそ40万円から60万円程度が相場とされています。この中には、母国から日本へ来るための航空券代や、現地で行われる日本語教育のための講習費、そして日本に入国してからの約1ヶ月間に及ぶ生活指導の費用などが含まれます。
また、ビザの申請や各種手続きを代行してもらうための費用もここに含まれます。さらに、初めて監理団体に加入する際には、出資金や入会金として数万円程度の支払いが必要です。これらの初期費用は、採用する国や依頼する監理団体によって大きく変動するため、複数の組合から見積もりを取って比較検討することをお勧めします。
ランニングコストの目安
配属後にかかる毎月のランニングコストとして忘れてはならないのが、監理団体へ支払う「監理費」です。これは、実習生が適切に働いているかを定期的に巡回して確認したり、生活上のトラブルを通訳付きでサポートしてもらったりするための費用です。一人あたり月額で約3万円から5万円程度が目安となります。
これに加えて、当然ですが実習生本人へ支払う給与が発生します。技能実習生には日本人と同等以上の給与を支払う義務があり、地域の最低賃金を下回ることは認められません。社会保険料の会社負担分や、住居の準備にかかる家賃の補助なども考慮すると、安価な労働力を確保するという考え方では予算が合わなくなることもあるため、注意が必要です。
技能実習制度の廃止と「育成就労制度」への移行
さて、今後の受け入れを考えるうえで絶対に知っておかなければならないのが、技能実習制度が廃止され、新しい制度へ生まれ変わるという最新の動向です。ニュースなどで耳にして、不安に思っている方もいるかもしれません。ここでは、なぜ制度が変わるのか、そして新制度はどのようなものになるのかを整理します。
比較項目 | 現在の「技能実習制度」 | 新しい「育成就労制度」 |
制度の主な目的 | 開発途上国への国際貢献 | 人材育成と国内の人材確保 |
職場を変える転籍 | 原則として認められない | 一定の条件を満たせば本人希望で可能 |
在留期間の目安 | 最長5年 | 原則3年(特定技能へ移行しやすくなる) |
施行される時期 | 現在運用中 | 2027年(令和9年)4月から施行予定 |
なぜ技能実習制度は廃止されるのか
技能実習制度が見直される最大の理由は、制度が掲げる「国際貢献」という目的と、現場の「人手不足の解消」という実態が大きく乖離してしまったことにあります。建前と本音のズレからさまざまな問題が生じ、実習生に対する厳しい労働環境や、不当な扱いといった人権侵害の事案が国内外から指摘されるようになりました。
また、実習生は原則として別の企業に転職することが禁止されていたため、職場環境が悪くても逃げ出すことができず、結果として失踪事件につながるケースも後を絶ちませんでした。こうした課題を根本から解決し、外国人に長く安心して日本で働いてもらう環境を整えるために、政府は制度の抜本的な見直しを決断したのです。
新制度「育成就労」の概要と企業への影響
新しい制度は「育成就労制度」と名付けられ、2027年4月から施行される予定です。この新制度では、建前だった国際貢献という言葉を外し、明確に「人材育成」と「国内の人手不足解消」を目的として掲げています。これにより、企業は堂々と労働力として外国人を迎え入れ、戦力として育成することが可能になります。
企業にとって最も影響が大きいのは、一定の条件を満たせば、働く外国人の希望による「転籍(職場を変えること)」が認められるようになる点です。これまでは一度受け入れれば辞めにくい仕組みでしたが、今後はより良い待遇や労働環境を求めて人材が移動するようになります。つまり、企業は外国人に選ばれる魅力的な職場づくりを進めなければ、せっかく育てた人材が他社に移ってしまう可能性があると認識しておく必要があります。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- 技能実習制度は技術を教える仕組みだが、実際は企業の人手不足を支える重要な役割を担っている
- 企業単独型と団体監理型があり、多くの企業はサポートが手厚い団体監理型を利用して受け入れている
- 日本人と同等の給与に加え、初期費用や監理費などの特有のコストが発生することを予算に組み込む必要がある
- 2027年からは「育成就労制度」に移行し、外国人の転籍が可能になるため、より良い職場環境の整備が急務となる
制度の形が変わっても、日本の企業が外国からの人材の力に助けられる状況は今後も変わりません。今のうちから正しい知識を身につけ、外国籍の従業員と共に成長できる組織づくりに取り組んでいくことが、これからの企業経営を力強く支える鍵となるはずです。













