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TNFDとは?TCFDとの違いや4つの開示項目・企業の対応事例を解説
2026-08-03
TNFDとは?TCFDとの違いや4つの開示項目・企業の対応事例を解説
自社のサステナビリティ情報開示において、TNFDの要件をどのように理解し対応すべきか悩んでいる担当者に向けて解説します。この記事では、TNFDの基本的な意味やTCFDとの違い、企業が対応すべき具体的なステップを紹介します。読み終わると、自社で今すぐ検討すべきアクションが明確になります。自然関連の財務情報開示は今後の企業価値を左右する大きなテーマとなりつつあります。




TNFDとは?基本的な意味と設立の目的

TNFDとは?基本的な意味と設立の目的
TNFD (Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)とは、自然関連財務情報開示タスクフォースを指します。企業が自社の事業活動と自然環境との関わりを評価し、そのリスクや機会を適切に開示するための国際的な枠組みです。自然環境の損失が深刻化するなかで、企業活動が自然に与える影響や依存度を透明化し、資金の流れを自然にプラスとなる「ネイチャーポジティブ」へ向かわせることが目的とされています。


項目
TCFD
TNFD
正式名称
気候関連財務情報開示タスクフォース
自然関連財務情報開示タスクフォース
対象テーマ
気候変動・温室効果ガス排出
生物多様性・水・土壌など自然資本全体
指標の特性
世界共通の指標(温室効果ガス排出量)で測定可能
地域ごとに状態や課題が異なるため、地域性が重要
求められる開示
気候変動リスクと機会の評価・開示
事業展開地域における自然との接点の詳細把握と開示
共通点
企業活動と環境の関わりを投資家に適切に開示するための国際的な枠組み

TNFDが世界的に求められている背景


TNFDが求められるようになった背景には、自然資本の急速な減少が世界経済にとって無視できないリスクになっているという危機感があります。世界のGDPの半分以上が自然に中程度または高度に依存しているとも言われており、多くの企業活動は農産物や水資源といった自然の恵みに支えられています。そのため、自然環境が破壊されると、原材料の調達困難やコスト高騰といった事業継続上の重大なリスクに直面します。企業が自然から受ける恩恵を正しく認識し、経済活動と自然保護を両立させることが、投資家からの信頼を得るために重要になっています。気候変動対策だけでは不十分であり、生物多様性の損失を食い止めるという新たな視点が強く求められています。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)との違い


TNFDとTCFDの大きな違いは、対象とする環境テーマの範囲と地域性の重要度にあります。TCFDが主に温室効果ガスの排出や気候変動によるリスクを扱うのに対し、TNFDは生物多様性や水、土壌といった自然資本全体を対象とします。気候変動は世界共通の指標である温室効果ガス排出量で概ね測ることができますが、自然環境は地域ごとに状態や課題が全く異なります。水資源が豊富な地域での事業活動と、水不足が深刻な地域での事業活動では、自然への影響度合いが大きく変わります。そのためTNFDでは、事業を展開している特定の地域における自然との接点を、詳細に把握することが求められます。







TNFDが企業に推奨する4つの開示項目

TNFDが企業に推奨する4つの開示項目
TNFDの枠組みでは、企業が投資家に向けて開示すべき内容を4つの柱に整理しています。これはTCFDの構造を踏襲しており、気候変動への対応をすでに進めている企業にとっては馴染みやすい構成になっています。4つの柱を軸に情報を整理することで、企業は自然に関するリスクや機会を経営戦略に組み込みやすくなります。

開示の柱(項目)
概要と目的
ガバナンス
自然関連のリスクや機会に対する取締役会や経営陣の監督体制
戦略
自然への影響が企業のビジネスモデルや財務計画に与える中長期的な影響
リスクと影響の管理
自然に関するリスクを特定し、組織全体のリスク管理に統合するプロセス
指標と目標
リスクや機会を評価し、進捗を管理するために使用する定量的な指標と目標

ガバナンス(組織の統治体制)における開示


ガバナンスの項目では、自然関連の課題に対する組織の監視体制を明確にすることが求められます。取締役会が自然環境に関するリスクや機会をどのように認識し、経営の意思決定に反映させているかを開示します。また、経営陣がそれらの課題に対してどのような役割や責任を負っているかを説明することも重要です。企業全体で自然資本への対応を推進する統治体制が整っているかどうかが、投資家にとっての大きな判断材料になります。さらに、自然環境に影響を受ける地域社会や先住民族といった社外のステークホルダーとの対話方針を含めることも推奨されています。

戦略(自然関連リスクと機会の対応)の明確化


戦略の項目では、自然に関する課題が自社のビジネスモデルや財務計画にどのような影響を与えるかを示します。短期から長期にわたる時間軸で、自然資源の枯渇や法規制の強化がもたらす事業リスクを分析します。同時に、環境に配慮した新しい製品開発など、自然資本の回復に貢献することで生まれる事業機会についても言及します。自然とビジネスの持続可能性をどのように両立させるかという方針を具体的に伝えることが目的です。将来の不確実性に備えるため、複数のシナリオを用いた分析を行うことも効果的です。

リスクと影響の管理(評価プロセス)の提示


リスクと影響の管理では、自然関連のリスクをどのように特定し、評価しているかのプロセスを説明します。自社の事業活動が自然環境にどのような影響を与えているか、また事業が自然にどれだけ依存しているかを洗い出す手順を開示します。特定した課題を組織全体の既存のリスク管理システムにどのように組み込んでいるかを示すことで、経営の安定性を投資家に伝えることができます。自然災害による操業停止といった物理的リスクに加え、環境規制の強化に伴う移行リスクの両面を評価する仕組みが求められます。

指標と目標(進捗の測定)の設定


指標と目標の項目では、自然環境への対応状況を客観的に測るための定量的なデータを開示します。水の使用量や特定地域の森林面積への影響など、自社の事業特性に合った指標を設定します。さらに、それらの指標に対してどのような改善目標を掲げ、現在どの程度達成できているのかを報告します。具体的な数値を用いることで、企業の取り組みの真剣度や進捗がステークホルダーに伝わりやすくなります。目標を設定する際には、科学的根拠に基づいた他の国際的な枠組みと連携しながら進めるアプローチが推奨されます。




TNFDの推奨評価プロセス「LEAPアプローチ」の概要

TNFDの推奨評価プロセス「LEAPアプローチ」の概要
企業が自然関連のリスクや機会を自己評価しやすくするため、TNFDは「LEAPアプローチ」と呼ばれる手順を推奨しています。このアプローチは4つのフェーズから構成されており、複雑な自然環境との関わりを段階的に整理することができます。LEAPアプローチを活用することで、情報開示に向けた社内での分析作業を効率的かつ体系的に進めることが可能になります。


フェーズ(頭文字)
日本語訳
主な実施内容
L(Locate)
発見
事業活動と自然の接点がある地域を特定する
E(Evaluate)
診断
特定地域において自然への依存と影響を分析する
A(Assess)
評価
依存と影響から生じるリスクと事業機会を評価する
P(Prepare)
準備
対応策を決定し、開示に向けた情報を整理する

発見(Locate)と診断(Evaluate)のステップ


最初の「発見」フェーズでは、自社の事業拠点やサプライチェーンが、自然環境と接点を持つ場所を特定します。特に生態系が脆弱な地域や水不足が懸念される地域で活動していないかをマッピングします。対象範囲が広すぎる場合は、事業へのインパクトが大きい原材料や拠点に絞り込む工夫が有効です。続く「診断」フェーズでは、その特定された場所において、自社が自然資源をどれほど消費しているか、または自然環境にどのような影響を与えているかを分析します。事業が自然から受ける恩恵と、与える負荷の両面を客観的なデータに基づいて捉えることが重要になります。


評価(Assess)と準備(Prepare)のステップ


「評価」フェーズでは、診断結果をもとに、自社にとっての財務的なリスクと機会を洗い出します。自然環境の悪化による原材料の調達リスクや、逆に環境負荷を下げる新技術による競争力強化の機会などを検討します。事業に与える金銭的な影響額を試算することで、経営陣への報告がスムーズになります。最後の「準備」フェーズでは、評価したリスクに対する具体的な対応策を経営戦略に落とし込みます。そして、TNFDの4つの開示項目に沿って外部へ報告するためのデータをまとめ、実際の開示に向けた準備を整えます。





【事例】TNFDに基づく実際の企業開示事例





日本企業の中には、いち早くTNFDの枠組みを取り入れ、積極的な情報開示を進めている先進的な事例が存在します。自社の事業特性に合わせてLEAPアプローチを活用し、自然資本への対応を経営戦略に結びつけています。他社の具体的な取り組みを知ることで、自社でどのような分析や開示が可能かをイメージしやすくなります。

企業名
主な事業領域
TNFDに基づく分析対象・取り組みの概要
キリンホールディングス
飲料・食品・医薬
紅茶農園や水リスクの高い醸造所を対象にLEAPアプローチを実施
積水ハウス
住宅・不動産
「5本の樹」計画などによる緑化を通じた生物多様性への影響を定量評価

事例:キリンホールディングス株式会社の取り組み


キリンホールディングス株式会社は、事業活動が農産物や水資源に強く依存していることを背景に、TNFDの枠組みを早期に導入しています。具体的には、LEAPアプローチを用いてスリランカの紅茶農園における自然への依存度や影響を詳細に分析しました。また、水リスクが高いアメリカの自社醸造所を対象に自然移行計画を立案し、流域のステークホルダーと連携した水資源の保全に乗り出しています。単なるリスク評価に留まらず、事業の持続可能性と地域全体の自然保護を直結させた先進的な取り組みです。


事例:積水ハウス株式会社の取り組み


積水ハウス株式会社は、自社の住宅地における緑化事業を通じて、自然との共生とTNFD対応を進めています。同社が推進する「5本の樹」計画では、地域の在来樹種を庭に植栽することで、都市部における生物多様性の保全を目指しています。この取り組みによる自然へのポジティブな影響を、ビッグデータやAIを用いて定量的に評価し、TNFDが求める枠組みに沿って情報開示を行っています。企業の事業活動が自然環境に貢献する『ネイチャーポジティブ』の実現を、具体的な数値で示している好例といえます。






まとめ





この記事の要点をまとめます。

  • TNFDは企業活動と自然関連のリスクや機会を評価し開示するための枠組みである
  • 企業が取り組むべき開示項目はガバナンス・戦略・リスクと影響の管理・指標と目標の4つである
  • 自社の影響を分析する手順としてLEAPアプローチの活用が推奨されている

自然環境の保全は企業の持続的な成長に直結する重要な課題ですので、まずは自社の現状把握から着実に取り組んでみてください。
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