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ナフサのリサイクルとは?不足の背景や仕組み・企業の取り組み事例を解説
2026-08-20
ナフサのリサイクルとは?不足の背景や仕組み・企業の取り組み事例を解説

化学メーカーや製造業の調達・企画部門において、ナフサの価格高騰や供給不安に頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。この記事では、深刻化するナフサ不足の解決策として注目を集める「ナフサのリサイクル」について、その背景から技術の仕組み、実際の企業事例までをわかりやすく解説します。最後までお読みいただくことで、自社の代替原料調達や脱炭素戦略に活かせる具体的なヒントを得ることができます。




ナフサのリサイクルが急務となっている背景

ナフサのリサイクルが急務となっている背景
近年、製造業においてナフサのリサイクルが急速に注目されています。この背景には、既存の化石燃料に依存したサプライチェーンが限界を迎えつつあるという深刻な状況があります。日本の石油化学産業は、原料調達の不確実性と環境対応という二つの大きな波に同時に直面している状態です。ここでは、なぜ今ナフサのリサイクルが求められているのか、二つの視点から詳しく解説します。

背景にある理由
主な要因
リサイクルが求められる狙い
中東情勢や為替による供給不足と価格高騰
中東依存度約4割・ホルムズ海峡などの地政学リスク、世界的なエチレン需要増、円安による輸入コスト上昇
輸入に頼らない国内でのリサイクル原料を確保し、安定供給とコスト抑制を目指す
脱炭素社会への移行と環境負荷低減の要求
国内外の環境規制強化、原油由来ナフサ使用によるCO2排出、投資家・消費者からの圧力
廃プラスチックを再利用したナフサで炭素循環を実現し、サプライチェーン全体の環境負荷を低減する

中東情勢や為替による供給不足と価格高騰


一つ目の理由は、構造的なナフサの供給不足と調達コストの高騰です。日本のナフサ調達は中東地域への依存度が約4割(国産含む構成比、2024年)を占めており、輸入ナフサだけで見ると中東依存度は7割超に達します。また、国産ナフサの原料となる原油の中東依存度は9割を超えており、ホルムズ海峡の通行リスクが日本の石油化学産業の急所となっています。さらに、アジア地域の旺盛な需要を背景としたナフサ価格の高止まりや、円安による輸入コストの上昇が重なり、将来にわたってナフサを安定的に安価で調達することは困難になりつつあります。このような調達リスクを回避するため、輸入に頼らない国内でのリサイクル原料の確保が急務とされています。

脱炭素社会への移行と環境負荷低減の要求


二つ目の理由は、脱炭素社会に向けた国内外の環境規制の強化です。従来の原油由来のナフサを使用し続けることは、大量の二酸化炭素を排出することにつながり、投資家や消費者からの厳しい目にさらされます。企業は事業活動における温室効果ガスの排出量を削減する社会的責任を負っており、サプライチェーン全体での環境負荷低減が強く求められています。そのため、廃プラスチックを再利用して新たなナフサを生み出すリサイクル技術は、炭素の循環を実現する上で非常に重要な手段として位置づけられています。




ナフサのリサイクル(ケミカルリサイクル)の仕組み

ナフサのリサイクル(ケミカルリサイクル)の仕組み
ナフサのリサイクルとは、一般的に「ケミカルリサイクル」と呼ばれる技術を指します。これは、不要になった廃プラスチックを化学的な処理によって分子レベルまで分解し、再びプラスチックの原料となるナフサ相当の油に戻す仕組みです。ここでは、具体的な技術の内容と、従来のリサイクル手法との違いについて解説します。

項目
廃プラスチックを原料に戻す熱分解技術
物理的な再利用であるマテリアルリサイクルとの違い
処理方法
廃プラスチックを酸素のない状態で加熱し、気化させたガスを冷却して生成油(リサイクルナフサ)を取り出す
廃プラスチックを溶かして再びプラスチック製品の形に成形する物理的な手法
再生される品質
原油由来のナフサと同等の品質を持ち、新品と同じ性能のプラスチック製品を再生できる
リサイクルを繰り返すごとに品質が劣化し、用途が限定されていく
特徴・位置づけ
既存の石油化学コンビナートのナフサクラッカーにそのまま投入でき、分子レベルから再資源化できる
処理工程はシンプルだが、何度も再生し続けることが難しい

廃プラスチックを原料に戻す熱分解技術


ケミカルリサイクルの中心となるのが、廃プラスチックを酸素のない状態で加熱する熱分解技術です。この工程により、プラスチックは気化し、それを冷却することでナフサに似た性質を持つ生成油が得られます。得られた生成油は「リサイクルナフサ」「サーキュラーナフサ」「廃プラ分解油」「CR油」などと呼ばれ、既存の石油化学コンビナートの設備(ナフサクラッカー)に投入することが可能です。これにより、原油から精製されるナフサと同等の品質のプラスチック製品を再生できる点が、この技術の大きな特徴といえます。

物理的な再利用であるマテリアルリサイクルとの違い


ケミカルリサイクルは、従来から広く行われているマテリアルリサイクルとは異なるアプローチをとります。マテリアルリサイクルは、廃プラスチックを溶かして再びプラスチック製品の形にする物理的な手法です。この方法は処理工程がシンプルですが、リサイクルを繰り返すたびに素材の品質が劣化し、最終的には用途が限られてしまうという弱点があります。対してケミカルリサイクルは、一度分子レベルの原料まで戻すため、新品と同等の品質を保ったまま繰り返し再生できる可能性を持っている点が、大きな利点とされています。




ナフサのリサイクルにおける利点と直面する壁

ナフサのリサイクルにおける利点と直面する壁
ナフサのリサイクルは、資源循環の切り札として期待される一方で、普及に向けて乗り越えるべきハードルも存在します。導入を検討する企業にとっては、期待できる効果と実際の事業化における難しさを両面から理解しておくことが大切です。ここでは、リサイクルの導入による利点と、現在業界が直面している課題について説明します。

観点
化石資源への依存脱却とCO2削減効果
莫大な設備投資コストと回収網の構築
主な内容
輸入原油への依存を下げ、ライフサイクル全体でCO2を削減できる
プラント建設・技術開発に数百億円規模の初期投資が必要
背景
焼却時の温室効果ガスと地下資源の採掘量を抑えられる
不純物の少ない廃プラを大量・継続的に集める必要がある
効果・対応
環境価値の高い素材として企業のブランド価値向上につながりやすい
自治体ごとに異なる回収体制を越えた広域インフラ整備が急務

化石資源への依存脱却と二酸化炭素の削減効果


最大の利点は、輸入原油への依存度を下げながら、製品ライフサイクル全体での二酸化炭素排出量を削減できることです。廃プラスチックを焼却処分する代わりに原料として再利用するため、焼却時に発生する温室効果ガスを大きく抑えることができます。同時に、輸入原油への依存度が下がることで、枯渇性資源の消費抑制にもつながります。環境価値の高い素材として製品を提供できることは、取引先や消費者に対する企業のブランド価値向上にもつながりやすいといえます。

莫大な設備投資コストと廃プラスチック回収網の構築


一方で、リサイクルの社会実装には大きな課題が残されています。ケミカルリサイクルのプラント建設や技術開発には数十億〜数百億円規模の大型投資が必要であり、単独の企業で負担するにはリスクが高いのが実情です。さらに、質の高いリサイクルナフサを安定して製造するためには、不純物の少ない廃プラスチックを大量かつ継続的に集める必要があります。現在の日本の廃棄物回収システムは自治体ごとに異なっており、広域で効率的に廃プラスチックを回収・分別するインフラの整備が急務となっています。




【事例】ナフサのリサイクルに取り組む企業の最新動向





すでに日本の化学メーカーや関連企業は、ナフサのリサイクル実用化に向けて具体的な一歩を踏み出しています。単独での技術開発にとどまらず、業界の垣根を越えた連携が進んでいるのが昨今の特徴です。ここでは、実際の企業がどのようにリサイクル事業に取り組んでいるのか、二つの事例を通じて紹介します。

観点
国内大手化学メーカーによる実証実験と事業化
異業種連携による新たなサプライチェーンの形成
主な取り組み
三井化学が「素材の素材から変えていく」を掲げ、ナフサ代替原料を推進
化学メーカー・リサイクル企業・物流・小売など異業種が連携する事例が増加
具体例
廃プラ由来の熱分解油を自社クラッカーに投入し、基礎化学品を製造
三菱ケミカル×ENEOSが茨城事業所で年間2万トン規模のプラントを稼働、リファインバースが廃プラ回収・調達を担当
狙い・効果
マスバランス方式で環境配慮型製品を市場投入し、業界全体の底上げに貢献
動脈産業(製造)と静脈産業(廃棄物処理・再資源化)をつなぎ、安定した資源調達ネットワークを構築

国内大手化学メーカーによる実証実験と事業化


三井化学は、気候変動対策の一環として「素材の素材から変えていく」を掲げ、ナフサの代替原料の導入を推進しています。同社は、従来の石油由来のナフサに加えて、バイオマスナフサやリサイクル由来のナフサを組み合わせたポートフォリオの構築を目指しています。廃プラスチックからケミカルリサイクルによって生成された油を自社のクラッカーに投入し、基礎化学品を製造する実証実験を進め、2024年3月から本格運用を開始しており、マスバランス方式を用いた環境配慮型製品の市場投入を行っています。このような大手メーカーの取り組みは、業界全体のリサイクル技術の底上げに大きく貢献しています。

異業種連携による新たなサプライチェーンの形成


廃プラスチックの回収から原料化、製品化までの道のりは、化学メーカー一社の努力だけでは完結しません。そのため、リサイクル企業、物流業者、小売業者など、異なる業種が手を組む事例が増加しています。実際に、三菱ケミカルグループとENEOSは茨城事業所で年間2万トン規模のケミカルリサイクルプラントを共同で稼働させ、原料となる廃プラスチックの回収・調達はリファインバースグループが担う体制を構築しています。こうしたパートナーシップは、これまで分断されてきた動脈産業(製造)と静脈産業(廃棄物処理・再資源化)をつなぎ、安定した資源調達ネットワークを構築する上で重要な取り組みといえます。




まとめ





この記事の要点をまとめます。
  • ナフサのリサイクルは、中東依存による調達リスクと脱炭素の要求から急速に必要性が高まっている
  • ケミカルリサイクル技術により、廃プラスチックを分子レベルで分解して新品と同等の原料を再生できる
  • 莫大な設備投資と効率的な廃プラ回収網の構築が今後の普及に向けた大きな壁となっている
  • 三井化学などの大手企業は、石油由来からリサイクルナフサ等への原料転換を既に進めている
ナフサ不足という危機は、企業にとって資源循環型の新しいビジネスモデルを構築する良い機会となります。
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