プラスチックリサイクルの種類と現状とは?企業の取り組み事例も解説
2026-09-29
プラスチックリサイクルの種類や現状が分からず悩んでいる企業担当者や一般の方に向けて、基本的な知識から最新の課題までを詳しく解説します。この記事では、3つのリサイクル方法の違いや日本のリサイクル率の実態について具体的に説明します。読み終わることで、自社のSDGs活動や日々の分別行動にすぐ活かせるようになります。結論として、プラスチックリサイクルにはマテリアル、ケミカル、サーマルの3種類があり、日本では単に燃やすだけの処理を減らして資源として循環させることが重要視されています。
プラスチックリサイクルとは?現在の重要性と背景
現代の私たちの生活において、プラスチックリサイクルの重要性は年々高まっています。プラスチックは軽くて耐久性に優れているため、食品の容器から家電製品まで幅広く利用されている素材です。その一方で、自然界で分解されにくいという性質を持つため、使用後に適切に処理されなければ環境に長期間残り続けてしまいます。さらに、プラスチックごみは焼却や埋立の過程でさまざまな環境問題を引き起こすことが指摘されています。ここでは、プラスチックごみが具体的にどのような問題を生んでいるのかを2つの観点から解説します。
プラスチックごみが引き起こす主な問題 | 影響の内容と背景 |
地球温暖化の進行 | 焼却処理の際に二酸化炭素が発生し、気候変動を加速させる原因になります |
天然資源の枯渇 | プラスチックの原料となる石油は有限であり、使い捨てを続けると資源が減少します |
地球温暖化の進行
プラスチックごみを焼却処分すると、その過程で大量の二酸化炭素が排出されてしまいます。二酸化炭素は温室効果ガスの代表格として知られており、大気中に蓄積することで地球温暖化や気候変動を加速させる原因になると言われています。日本では使用済みプラスチックの多くが焼却処理に回されているため、ごみを資源として再利用するリサイクルの普及は、温室効果ガス排出量の削減に直結する取り組みと位置づけられています。欧州を中心とした世界各国では、プラスチックの利用制限や代替素材への転換を促す法律が制定されており、気候変動対策の観点からもリサイクルの重要性が高まっています。
天然資源の枯渇
プラスチックの主な原料は、地下から採掘される石油です。石油は地球上で生成されるまでに長い年月を要する有限の資源であり、使い捨てのプラスチック製品を作り続ければ、将来の世代が利用できる量はそのぶん減少していきます。経済協力開発機構(OECD)が2022年に発表した「Global Plastics Outlook」によると、世界で生産されたプラスチックのうちリサイクルされた割合は約9%にとどまっており、多くは一度使われただけで処分されてきました。使用済みプラスチックを資源として循環させる仕組みが整えば、新たに採掘する石油の量を抑え、限りある資源を長く活用することにつながります。日本でも、2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(通称:プラ新法)」が施行され、企業に対してプラスチック資源の循環を促す動きが本格化しています。
プラスチックリサイクルの3つの種類と特徴
プラスチックのリサイクル方法は、大きく分けて3つの種類に分類されています。私たちが普段分別して捨てたプラスチックは、回収された後にそれぞれの状態や素材に合わせて適切な方法で処理されます。方法によって再生されるものや環境への影響が異なるため、それぞれの違いを正しく理解しておくことが重要といえます。ここでは、代表的な3つの手法について順番に解説します。
リサイクルの種類 | 処理の仕組み | 再生されるものの例 |
マテリアルリサイクル | 細かく砕いたり溶かしたりして、再びプラスチック製品の材料として利用する | 新しいペットボトル、ベンチ、ボールペン |
ケミカルリサイクル | 化学的に分解して、プラスチックの原料や化学物質に戻す | 石油代替の油、製鉄所で使う還元剤 |
サーマルリサイクル | 焼却した際に発生する熱をエネルギーとして回収する | ごみ発電の電力、温水プールの熱源 |
マテリアルリサイクル(材料リサイクル)
マテリアルリサイクルとは、使用済みのプラスチックを細かく砕いたり溶かしたりして、再びプラスチック製品の材料として利用する方法です。元の性質を変えずにそのまま形を変える手法であり、材料リサイクルと呼ばれることもあります。ペットボトルを回収して新しいペットボトルを作ったり、食品トレーをベンチに作り直したり、ペットボトルをボールペンに加工したりする技術がこれに該当します。この手法は、プラスチックの形を直接再利用するため、比較的分かりやすい循環の形といえます。ただし、リサイクルを繰り返すうちに少しずつ素材の品質が低下してしまうという弱点があるため、汚れが少なく単一の素材でできているきれいなごみを集める必要があります。
ケミカルリサイクル(化学的リサイクル)
ケミカルリサイクルは、使用済みのプラスチックに化学的な処理を加え、プラスチックの原料や化学物質にまで分解して再利用する方法です。熱を加えたり特定の薬品を使ったりして、プラスチックを分子のレベルまで戻します。この技術を使うと、複数の種類のプラスチックが混ざっているものや、少し汚れが残っているものでも処理しやすくなります。分解された後は、石油の代わりになる油や、製鉄所で使用される還元剤などに生まれ変わります。元の品質に近い状態まで戻すことができる優れた方法ですが、処理の過程で大規模な設備と多くのエネルギーを必要とするため、導入コストが高くなりやすいという側面を持っています。
サーマルリサイクル(エネルギー回収)
サーマルリサイクルは、プラスチックをごみとして焼却処分する際に発生する熱を、エネルギーとして回収して利用する方法です。熱回収やエネルギー回収とも呼ばれており、ごみを燃やした熱を利用して発電を行ったり、温水プールの水を温めたりすることに使われます。汚れがひどくてマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに回せないプラスチックを有効活用できるという利点があります。日本ではごみ処理施設の機能が向上しており、この手法が広く普及しています。ただし、燃やすこと自体は物質を循環させているわけではないため、国際的な基準では「リサイクル」と区別する見方もあります。詳細は後述する「公表数値と国際基準とのギャップ」で解説します。
日本におけるプラスチックリサイクルの現状と課題
日本は世界的に見ても、ごみの分別回収が細かく行われている国として知られています。しかし、リサイクルの実態を詳しく見ていくと、数字だけでは読み取れない複雑な課題が隠れています。政府や関連団体が発表しているデータと、世界が求めている基準との間にはギャップがあり、そこを正しく把握することが解決への第一歩となります。ここでは、日本のリサイクル率の真実と、今後の技術的な課題について解説します。
主な課題 | 内容と背景 |
リサイクル率の見え方と国際基準とのギャップ | 公表されている8割超のリサイクル率の多くはサーマルリサイクル(熱回収)で、海外基準のマテリアル・ケミカルリサイクル率に揃えると実態は大きく下がる |
高度な再資源化を阻む技術・インフラ面の課題 | 複合素材や汚れの付着で選別が難しく、ボトル to ボトルのような水平リサイクルの普及や、輸出に頼らない国内処理体制の構築にはまだ時間を要する |
公表数値と国際基準とのギャップ
日本のプラスチックリサイクル率は約87%~89%と公表されており、世界的に見ても高い水準です。ただしこの数値には、ごみを燃やして発生した熱をエネルギーとして回収する「サーマルリサイクル」が大きく含まれています。素材として再生する手法のみを「リサイクル」と見なす欧米基準で計算し直すと、日本の数値はおよそ2割台にまで下がるとされています。公表値と国際基準との間にギャップがある点は、議論を進めるうえで把握しておきたい論点です。
水平リサイクルと国内処理体制を阻む技術的な課題
プラスチックを同じ用途の製品に戻す「水平リサイクル」を進めるには、素材ごとに細かく選別し、高い純度で再資源化する技術が欠かせません。しかし、複数の素材が貼り合わされた包装材や汚れの残った容器は分別が難しく、現状ではマテリアルリサイクルに回せる量が限られています。加えて、これまで廃プラの一部を海外輸出に頼ってきた経緯もあり、国内処理インフラの整備が急務となっている点も今後の大きな課題です。
プラスチックリサイクルに取り組む企業の具体的な事例
プラスチックごみ問題の解決に向けて、すでに多くの企業が独自の技術やアイデアを活かして具体的な行動を起こしています。自社の製品から出るプラスチックを回収して再び自社製品の容器に戻すという、高度な循環システムを作り上げている企業も増えてきました。ここでは、日本を代表する企業が実際に取り組んでいる先進的な事例を紹介し、そこから得られる知見を解説します。
企業名 | 取り組みの主な特徴と目標 | 期待される効果 |
サントリーホールディングス株式会社 | 使用済みペットボトルを再びペットボトルへ戻す「ボトルtoボトル」の水平リサイクルを推進し、世界で使用するすべてのペットボトルをリサイクル素材または植物由来素材へ切り替える | 新しい石油由来のペットボトルを作る場合と比べて、二酸化炭素の排出を大幅に削減する |
花王株式会社 | 他社と協働し、使用済みの洗剤つめかえパックを回収して再びつめかえパックへ再生する | 複合素材でリサイクルが難しかったフィルム容器の資源循環に向けた実証実験を推進する |
【事例】サントリーホールディングス株式会社の取り組み
サントリーホールディングス株式会社は、使用済みのペットボトルを再びペットボトルとして蘇らせる「ボトルtoボトル」と呼ばれる水平リサイクルに力を入れています。飲料メーカーにとってペットボトルは事業の中核を担う容器であり、その環境負荷をいかに下げるかが重要な経営課題となっていました。同社は独自の「プラスチック基本方針」を掲げ、2030年までに世界で使用するすべてのペットボトルをリサイクル素材または植物由来素材へ切り替える目標を設定しています。自治体や他企業とも協定を結びながら回収システムを強化し、新しく石油を使ってペットボトルを作る場合に比べて二酸化炭素の排出を大幅に抑えることに成功しています。この事例から、企業が自ら回収ルートの構築に関わることが循環型社会の実現につながると考えられます。
【事例】花王株式会社の取り組み
日用品メーカーである花王株式会社は、リサイクルが難しいとされてきた薄いフィルム容器の再生に取り組んでいます。洗剤やシャンプーのつめかえパックは、プラスチックの使用量を減らすという点では非常に優秀な製品です。しかし、複数の素材を何層も重ねて作られているため、使用後に単一の素材に分けてリサイクルすることが技術的に困難でした。そこで同社は、ライオン株式会社などの他企業と協力し、店舗に専用の回収ボックスを設置して使用済みのつめかえパックを集める仕組みをスタートさせました。そして、回収したフィルムを再びつめかえパックの素材として生まれ変わらせるための研究施設を立ち上げ、製品化に向けた実証実験を進めています。ライバル企業と手を組んでまで業界全体の課題に取り組む姿勢は、今後のサステナビリティ経営における参考事例のひとつといえます。
個人や企業ができるプラスチックリサイクルのアクション
プラスチックリサイクルを社会全体で前進させるためには、大規模な設備投資だけでなく、私たち一人ひとりの行動の変化が欠かせません。企業としての役割と、個人としての役割は異なりますが、両者が車の両輪のように連動することで効果が高まります。ここでは、それぞれの立場で明日からすぐに始められる具体的なアクションについて解説します。
行動する主体 | 具体的なアクションの例 | アクションの目的 |
企業 | パッケージを単一素材へ見直す、社内でマイボトル利用を促す、業界団体や他社と協力して共通の回収ボックスを設ける | リサイクルしやすい製品設計を進め、社会全体を巻き込んだ循環の仕組みを構築する |
個人 | 汚れを水で軽くすすいでから分別する、マイバッグを持参する、過剰包装の商品を避ける | 再生品の品質を高め、使い捨てのプラスチックごみそのものを減らす |
企業ができる取り組み
企業がまず取り組みたいアクションのひとつは、自社が提供している製品のパッケージや容器を見直すことです。複数の素材が組み合わさっているパッケージを、単一の素材に変更するだけでもリサイクルのしやすさを大きく向上させることが期待できます。また、従業員に対して社内で使用する使い捨てカップやストローの利用を控えさせ、マイボトルの利用を促すような社内ルールの整備も有効です。さらに、自社だけで解決できない課題については、業界団体や他社と協力して共通の回収ボックスを設けるなど、社会全体を巻き込んだ仕組みづくりを主導することが求められます。こうした地道な活動は、長期的に見れば企業のブランド価値を高めることにもつながるはずです。
個人ができる取り組み
個人としてできる基本的なアクションは、自治体が定めたルールに従って正しくごみを分別することです。特に重要なのは、プラスチック容器に付着した食品の油や汚れを、水で軽くすすいでから捨てるという行動です。汚れが残ったままのプラスチックが多く混ざると、選別効率が低下し、本来リサイクル可能だった分まで焼却処理に回されてしまうことがあります。また、買い物の際にマイバッグを持参したり、過剰に包装されている商品の購入を避けたりすることも、ごみの総量を減らす立派なアクションです。一人ひとりの小さな気遣いが集まることで、再生されるプラスチックの品質と量の向上が期待できます。
まとめ
この記事の要点をまとめます。
- マテリアル、ケミカル、サーマルの3つのリサイクル方法が存在する
- 日本の有効利用率は高いが、その多くは焼却による熱回収である
- 世界基準に合わせるため、物質として循環させる技術の導入が急務である
- サントリーや花王など、自社製品の水平リサイクルに挑む企業が増えている
- 個人による正しい分別と洗浄が、リサイクルの品質を左右する鍵となる
プラスチックを単なるごみではなく貴重な資源として扱う社会へ向けて、企業も個人もそれぞれの立場で具体的な行動を始めていきましょう。













